一九一七年九月、画家・詩人である竹久夢二は息子の不二彦の療養のため、恋人の笠井彦乃を連れ立って、金沢の山あいにある湯涌温泉に逗留する。歌集『山へよする』(一九一九)には、「湯涌なる山ふところの小春日に眼閉ぢ死なむときみのいふなり」という歌とともに、旅館の手すりに腰を掛けた彦乃の姿が描かれている。
とはいえ、こうした旅愁に満ちたシーンは、夢二が旅先で描いたスケッチの一側面に過ぎない。明治後期から昭和初期にかけて、都市と地方をつなぐ鉄道網が整備されると、山あいの風景は大きく様変わりした。夢二のスケッチブックには、そうした風景とともに、その土地で暮らす人々の何気ない仕草が多く描かれている。こうした夢二の眼差しは、同時代に起きた民藝運動、農民美術運動、創作版画運動、民俗学などの眼とも重なる。彼らもまた、仲間たちと連れ立って山村を旅し、その土地の風景や民家をスケッチし、工芸品の蒐集と制作を繰り返してきた。そして、都市と地方をつなぐ人的なネットワークをかたち作ることで、山村をひとつのユートピアとして描きだそうとしていたかもしれない。
本展では、民藝運動の周辺をめぐるリサーチを行う「アウト・オブ・民藝」の軸原ヨウスケと中村裕太が、北は東北、南は九州にわたる夢二の旅を紐解き、同時代の人物たちの旅と結びつけることで、新たな視点から夢二の旅を描き直していく。湯けむりの向こうに、未だ見ぬ夢二の思い描いたユートピアを覗き見てみたい。
[関連イベント]
●ワークショップ 「アウト・オブ・民藝のなかよし相関図づくり」
相関図から世界を見渡すことができます。あなたの気になるトピックに合わせ、あの人とこの人を相関図でつないでみよう。
日時:8月16日(日)10時30分~12時/講師:軸原ヨウスケ・中村裕太/対象:中校生以上/定員7名
参加費:無料(別途入館料要)/申込:要 [7月16日(木)9:00~7月30日(木)17:00までGoogleフォームhttps://forms.gle/KJ9j1NYfaukBS1Uj8にて応募申込受付]
●トークイベント「アウト・オブ・民藝のなかよしトーク」
会場を巡りながら、夢二、湯けむり、ユートピアというキーワードからどのような文献を集めてきたのかを仲良く語り合います。
日時:8月16日(日)13時30分~15時/講師:軸原ヨウスケ・中村裕太/定員:30名/参加費:無料(別途入館料要)/申込:不要
●ワークショップ「オリジナルスタンプのポストカードづくり」
日時:会期中の9時~16時/参加費:無料(別途入館料要)
●ワークショップ「2026夏休みこども博物館セミナー ミニこけしの絵付け」
日時:8月1日(土)~8月31日(月)9時~16時/対象:どなたでも/参加費:200円(別途入館料要)/申込:不要
●ギャラリートーク
日時:7月18日(土)、9月5日(土)、11月7日(土) 14時~14時30分/担当:川瀬千尋(金沢湯涌夢二館学芸員)/参加費:無料(別途入館料要)/申込:不要


PDFでご覧いただけます。→ アウトオブ民藝チラシ
